亀は意外でも何でもなく速く泳ぐ。
最後に「今回は鈴木淳史がゴーストライターを務めました」とネタばらしをしているんだが、本当だと思っていない人も多く、編集部の人間すら「鈴木さんネタにされてましたね!」と言っていたくらいだった。
長年の亀吉ファンからしたら嬉しい事であり名誉な事なのだが、とにかくその原稿を書くのが大変だったのを覚えている。
とんでもないプレッシャーだった。
自分が影響を受けた雑誌で、自分が影響を受けた書き手のゴーストライターを名前を明かして務めるなんて、どうかしている。
自殺行為だ。
そこで僕は覚悟を決めて、亀吉氏目線で自己批判をしたのだ。
自分だけでなくライター業を始めとする全ての若者を痛烈に批判した。
その当時、亀吉氏がある若手バンドが10歳上くらいの先輩バンドが好きすぎて目も見れないと話していたのを「そんなのだから駄目なんだ」と書かれていて、リスペクトするだけが能じゃなく追い越してやるくらいの気迫を持たないといけないと強く思ったのがきっかけだった。
亀吉氏はいつも真実を鋭く見抜き、毒をユーモアに包み込み語る。
そんじょそこらのガキンチョが真似ると便所の戯言になってしまう相当の高等技術。
主観と客観が絶妙な分量でブレンドされていて、読むたびに自分の文章が単なるオナニーでしかない事を痛感して嫌になってしまう。
人に見せられるオナニーを意識しているが、やはり主観が強すぎて自分語りになっているどうしようもないオナニーがいつも出来上がってくる。
先日、亀吉氏が書かれたスクービードゥーレビュー(http://kamekitix.exblog.jp/11703635/)を読んだ後、ため息しか出てこなかった。
文章を書くのが嫌になってしまった。
この3年、自分は本当に成長したのかと問いただしてしまった。
このレビューは完璧だと思う。
で、こんな事を抜け抜けと書いてるから駄目なわけなのだが、こないだインタビューをしたブームの宮沢氏が、こんな事を言っていた。
「先輩たちって勝手な話なんですけど、かっこよくいてくれないと寂しいんです。
清志郎さんのように永久に消えないかっこいい先輩がいて、他の先輩たちもまだまだ頂上を目指して活動されている。
だから、僕らも追いつきたいけど追いつけない。
で、先輩たちが行ってない道を探して作って行くしかない。
まだまだ、達成感がないんですよ。
やり続けるしかないんです。
それが原動力です。井上陽水さんの40周年ライブでも感じたけど、『次はどんな歌を歌ってくれるんだろう?』と思わせてくれた先輩たちが20年いたから、僕らはやってこれたんです。
財産ですよ、それは。
僕らだって若手からかっこいいと思われたいし、『いつまでも追いつけないだろ、コノヤロー!』とも言いたい。
それが若手へのメッセージですよ」
この話を聞けた時に自分の中の焦燥が静かに消えて、次やらざるべき事が見えた。
そして、もう一度、亀吉氏のスクービーレビューを読む。
これは書けない、だからこそ自分にしか書けないものを模索するしかない。
19歳の女の子に「中学生の時から読んでます」と声を掛けてもらった。
ちょっとした達成感があったんだが、元を正せば、この女の子は亀吉氏のファンであった。
19歳の娘をも、虜にするなんて本当の現役だ。
こちとら読んでると言われただけで、ファンとは言われてねぇもん。
あぁ嫉妬。
アラフォー元気すぎるよ、渋とすぎるよ、死んでくれねぇかな、駄目駄目、死んだら永久永遠のヒーローになっちゃって、もっと太刀打ちできなくなってしまう。
それに彼らの新作が途切れてしまうのは悲しすぎる。
勝手に殺しちゃ駄目駄目。
とりあえず若手ライター、ライターを志している奴、表現が好きで文章が好きだなんて一丁前に抜かす奴らは亀吉氏のスクービーレビューを読んだ方がいい。
それで何とも思わなかったのなら、もう人間やめちゃいな。
生きてるセンスないよ。
呑気に書いていたら北沢夏音氏がスタジオボイス「相対性理論特集」のライターだけでなくエディターも手がけたと連絡が入ってきた。
だから、あんたたち、元気すぎるって。
偉大な先輩がいることを財産に、せいぜい自分がくたばらねぇように書いていかなきゃ。
もう単なるリスペクトと単なる自己批判をしている場合ではない。
小生意気にも、先輩のレビューなんて書いてしまった。
100年早ぇよ、人に言われる前に自分で言っとく。