岡崎体育の日

ここ数年、『バズ』という言葉が市民権を得た。最初は伝説の音楽雑誌『BUZZ』をみんな今頃になって想い出しているのかなと思ったが、そんな訳はなく、何かしらざわつかせる、要は炎上に近い形で使われている言葉だと知る。


とにかく、フェスやSNSでバズらせる事が、バズった事が、重要であり、それは直結で人気に繋がる。まぁ、売り上げにも繋がる。


まもなく40歳という年齢なのか、それとも元々の保守的な性格なのか、そのようなムーブメントとは全く無縁の生活をしていて、ちょっと早く騒ぎが終わってくれないかなとさえ想っていた。


そして、このムーブメントの中心人物は、間違いなく岡崎体育君であろう。


MVのあるあるをおもしろおかしく詰め込んだ『MUSIC VIDEO』は、You Tube動画再生数約2180万回という数字を記録している。


その効果もあり、去年は『ミュージックステーション』にも出演して、メジャー1stアルバムはオリコン9位に輝いた。


とにかく彼は話題作りに長けていて、楽曲自体も『MUSIC VIDEO』しかり物議を醸すような印象に残るような作品を作り、真正面からバズらせにいく。そして、SNSでガンガンに煽っていく。


なりふり構わず手段を選ばす、ビジネスとして割り切って活動する彼だが、おもしろネタ要素の無い真面目な作風の楽曲もある。


充分、そういった作品だけで音楽的に勝負できると想うのだが、彼は割り切っていて、最初におもしろネタ要素の楽曲で興味を持ってもらってから、真面目な作風に興味を持ってもらえたらと言う。


もっと言うと、将来的にはステージに自分自身が立たなくて、プロデュースや楽曲提供に回りたいとも言う。


僕自身、関西のイベンターである清水音泉の男湯こと田口さんから紹介して頂き面識はあったが、インタビューを担当した事が無かったので、色々な情報は他の人が担当したwebインタビューなどで読んでいた。


その時代その時代の見せ方があるのもわかっているが、音楽至上主義、楽曲至上主義な僕としては少し寂しい考え方だなと想っていたのも事実で。


まぁ、でも僕には関係ないやと外野として呑気に暮らしていた5月下旬、太田出版の雑誌『Quick Japan』編集長から久しぶりに電話があった。


内容はずばりこう、『6月24日売りの次号で岡崎体育君表紙大特集をするので、軸となる4本の対談を担当して欲しい』。


ピンインタビューをせず、くるり岸田繁氏、ゴールデンボンバー鬼龍院翔氏、関ジャニ∞丸山隆平氏、そして体育君のお母様という4人との対談で掘り下げるのは良いなとは感じた。


が、その時点で各対談スケジュールは出ておらず、〆切スケジュールとしては6月上旬には取材と入稿を済ませ、6月中旬には校了という中々シビアなものだった。


てか、何よりも問題なのは担当インタビュアーが僕で良いのかって事。


体育君は時の人であり、いくらでも彼にインタビューしたい人はいるし、以前より彼に想いを持っている人もいる。


自分の様な少し距離を置いて対岸から眺めているような人間がメインインタビュアーなぞ務めて良いのか?


それに〆切スケジュールも決して楽では無い。


完全に断る方向も頭に入れて、なぜ僕なのかを編集長に聴くと、ひとつ目としては体育君と同じ関西在住の人間である事を話された。


つまり関西内での京都の立ち位置も或る程度把握しといて欲しいという事だったのだろう。


そして、ふたつ目としては客観性の温度感がある人。他にも、もう幾つか理由はあったのだが、個人的には、この客観性の温度感というのが一番納得いく答えであった。


もし自分が何かしらインタビューで関わるなら素を掘り下げたいと考えていたし、今回のアルバムでいうとラストナンバー『式』に興味があった。


取材初日、開口一番に『「式」が本当に良かった』と伝えると、体育君も『それは嬉しい!』と喜んでくれた。


おもしろネタ要素の無い真面目な楽曲『式』で、おもしろネタ要素の無い真面目なMVが公開されたのは、もう少し先だが、この時点で、その流れも聴かせてもらった。


その時点で、はっきりと自分の役割が見えた。


今作のアルバムも前作同様に『ミュージックステーション』に出演して、常にSNSでも煽り続け、目標ランキングの6位を大きく上回る2位に輝いた。快挙と言っていいだろう。


ただ問題はここから。


個人的にはバズる一瞬の記録なんかどうでもよくて、沁みる一生の記憶を信じている。


今作は前作以上に、沁みる一生の記憶に繋がるアルバムだと捉えている。そのガイドラインとして、是非とも6月24日(土)発売の『Quick Japan』を読んで欲しい。


ビジネス、ブランディングを自ら策略家である事を本人自ら隠さず明かすが、ナイーブでセンシティブな性格を持ち合わせている事やルサンチマン的な怒りや哀しみの執着心がある事が読んで頂いたら伝わるはずだ。


別に内心何を考えているかとか興味なくて、一瞬バズる感じがおもしろければいいという人もいるだろう。体育君に飽きたら、次のバズるおもしろコンテンツにいくだけだろうし。


でも、これも何かの縁。『式』を聴きながら、『Quick Japan』を読んで欲しい。そこにはあなたが知るつもりなかった魅力的な体育君が潜んでいる。


炎上も良いけど、哀愁も良いよ。


何はともあれ、6月24日は『岡崎体育の日』と覚えて、彼が表紙の『Quick Japan』を買いに行って欲しい。


今回に関しては、とにかく僕もなりふり構わず手段を選ばず、単純に売りたいのだ。


特にお母さんが語る小学校時代のエピソードには、思わず泣けてしまう…。


同じひとりっこでお母さんに全て世話をしてもらった身として、何とも言えないシンパシーがあった。


あっ、そうそう6月24日は我がオカン玲子の古希70歳の誕生日でもある。『オカン玲子の日』だ。


明日は我が家でオカン玲子の顔色を窺いながら、書店で岡崎体育の売れ行きも窺ってみよう。


おあとがよろしいようで。


http://www.ohtabooks.com/quickjapan/backnumber/2017/06/14000000.html