春咲小紅。
春なのに真冬用のトレーナを着るという、まさかの季節感に対して嘘をつく高等エイプリルフールには、もちろん誰も気付いてくれない。
それに、そのトレーナー「I (ハートマーク) NOISE」とプリントされた尋常じゃないくらいダサかっこいい代物なので、皆様そちらに目がいくみたいだ。
さて、昼間呑気に「徹子の部屋」なんぞを鑑賞。
だって、ゲストは清水ミチコさんですからね。
R-1でのバカリズムへの満点という誠実な点数の付け方で、余計に惚れてしまった。
スタッフには相当怒られたと、高田文夫さんのラジオで話していたらしいが。
本日も何事にも動じない清水さんは、徹子さんペースにも飲み込まれず淡々とモノマネをかましていく。
徹子さんもお気に入りの様子。
ピアノでのモノマネも披露していくが、ユーミン「卒業写真」にはモノマネだとわかっているのに感動してしまう。
とてつもない憑依芸…、憑依芸といえば矢野顕子さんモノマネはなかったが、軽くテレビで披露はしないくらい大切な物なんじゃないと都合よく解釈。
2月中旬に素晴らしいLIVEがあったなと思い出す。
必死にネットでチケットをゲットして行った素晴らしい夜を思い出しながら書いてみたい。
一昨年末、清水さん芸能生活20周年特番でゲストで矢野顕子さんが来られていた。
単純にモノマネをしているだけでなくスクラップ集を学生時代からもつほど、つまり30年の矢野ファンである清水さん。
憧れの人である矢野さんにピアノプレイに関するものを含め、たくさん質問をしていく。
最後に「ひとつだけ」をセッション。
ピアノを対に置き、矢野さんを自分に憑依させ,矢野顕子VS矢野顕子という夢セッション。
感情昂ぶった清水さんは演奏終わり、矢野さんのLIVEでお馴染みのメンバー紹介を行なう。
清水「今日はどうもありがとう!矢野顕子でした!クリフハーモンド!アンソニージャクソン!」
突然のアドリブに矢野さんは困って、笑いながら「いないってば!」と真面目に答える。
感無量の表情の清水さんが言う、「見えたんです!」。
このシーンが大好きである。
物まね番組や、どっかの楽屋で逢えるだけでも凄く嬉しい事なんだと思う,物まねをする人にとったら本物に逢う事は。
ところが自分の特番にゲストとして来て、セッションまで行なう。
このセッションシーンの後、特別映像として,あるオフシーンがオンエアされる。
それは本番前の矢野顕子さんピアノ調律シーン。
斜め後ろで清水さんは見学、そんな事にまるで気づいてもいない矢野さんはひたすら調律をしていく。
その姿を見て、たまらず涙がこみあげた清水さんは目頭を押さえて静かに,その場を去る。
多分、清水さん個人的には,このシーンは使って欲しくなかっただろう、彼女は芸人なのだから。
だが、その物語に僕は涙してしまった。
さてさて話は大脱線してしまったが、会場に付き後輩と会場を見渡す。
お洒落めいた会場にお洒落に酔う観客。
開演前にワインなんて引っ掛けてやがる観客を横目で馬鹿にしながら、席に着く。
矢野顕子さん登場、相変わらず普通の夢見る夢子ちゃんなので出てきただけで敬意を評しての笑いがこみあげる。
もちろん、そんな観客は我々2人。
満を持して中盤、清水ミチコさん登場。
前述の番組イメージがあったので凄く感動した状態で出てくるのかと思ったら、非常に淡々としているので少し違和感を感じる。
でも敬意を凄く表してるから、馴れ馴れしい訳もない。
まぁいいかと思いながら、ステージにかぶりつく。
清水さんは、学生時代からピアノ譜面台に矢野顕子さんスクラップ写真を貼りながら、物まね練習をしていた事を明かす。
「初日ゲストの岡林信康さんや昨日ゲストのエルレガーデンの彼は、矢野さんとのリハーサル2日か3日ですけど、私はリハーサル30年ですから!」
そしてセッション時は憑依の呪文を唱えて、自身に矢野顕子を降ろす。
喋った瞬間、そこには矢野顕子が2人。
矢野さんもおっしゃっていたが、清水さんが凄いのは毎回毎回変わるという矢野さんのピアノ演奏をこの場合完コピという言葉はおかしいが,完コピしている、完全に雰囲気を掴んでいる。
そして歌いだした瞬間、もう「すげえ…!」と言いながら笑うしかない。
そこに矢野さんの歌声が重なると、またもや「すげえ…!」と爆笑するしかない。
神がかっている…、他の観客は物凄く真面目に観ていたのには驚いた。
あれで笑わないで、何で笑うんだ。
矢野さんが言う、「これは企画でも何でもありません。清水ミチコという稀有な才能を持った人とのステージなのです」。
男前だ、織田ちゃんに聴かせてあげたい。
「エエもん、観た…」としか言葉が出ない。
圧巻である。
アンコールではテレビと同じく「ひとつだけ」を演奏。(テレビ時の映像→http://www.youtube.com/watch?v=G0N1GKgFXBw)
物まねが本物になる、完全に芸。
翌日、清水さんのブログを何気に読む。
そこには、こう記してあった。
「矢野顕子さんのコンサート
ゲスト入り。
この日の本番まで、
家でピアノを弾いていると
うっかり泣けてくるので、
感情的にならないよう、
暗示を徹底的に
かけてました。
『矢野さんと一緒に歌えて
アタシうれしいですぅ〜、
ひっくひっく』と
嗚咽されたら
お客さんは
どんだけ不愉快か。
本番では
危なかった一瞬も
ありましたが
何とか全曲」
このブログに、僕が嗚咽してしまった、どうしようもない。
プロだな、芸人だな、この人、本当に凄いなと。
そして彼女を同じ舞台人として呼んだ矢野顕子さんが、とんでもなく粋である。
エエもん、観た…,それに尽きる。
思い出しただけでニヤニヤするし、感動が甦る。
正直なところ、そんときのmixi日記リアレンジなんだが、気に入っていた日記内容なので転載を。
この普通じゃない感じが、ちょうど心地よいという表現魔法世界,分かち合える人は案外少ないのが残念だが、何かしら伝えていけたらななどと思うのである。
●不定期新コーナー「今日の玲子」
先日、向こうの世界へ心臓発作でお邪魔しかけたオカン玲子(61)だが、本日は朝から銀杏ファンのモノマネを頼んでもいないのにするなど御機嫌であった。
あ〜、ひと安心。