11。

「鈴木君って何でライターなったの?」


地元の小料理屋で同世代の演者が聞いてくれた。


いつも聞く側の僕が、聞かれる側になった。


勝手に喋るのは好きだが、質問を受けるっていうのは恥ずかしいものだ。


11年前の今頃の僕は大学卒業を目前に控え、就職も決まらず、漠然と構成作家になりたいと思っていたぼんやりな、どうしようもないモラトリアム気取りだったわけで。


こんなに面白いのに何で世の中、僕を拾おうとしないなんだ!って本気で思ってたもん。


井の中の蛙大海知らなさ過ぎて笑ってまう。


で、何だ、これくらいの時期に某情報誌の映画スケジュール作りというバイト募集があった。


毎日朝から晩まで入れるし、マスコミだし、こりゃいいなって。


何か適当に面接で喋って、で、落とされて、で、また電話きて、「補欠合格です」なんつって言われて入って。


映画館のスケジュール作りなんだけど、そりゃ編集部は宝の宝庫だった。


あらゆるカルチャーの情報先取りなわけだ、新譜もあるし新作ビデオもあるし新番組の台本だってある。


同い年の同じくらいイタい男子もいたりして、毎日気取って評論家ぶって知識対決したり、しょうもないな一瞬でも思ったらバイト仲間をやりこめて泣かせたり。


一応大卒の大人が恥ずかしい話だ。


1年は一瞬で終わる、僕はその流れで姉妹紙のテレビ情報誌に専属記者で入る。


まさにラッキー。


1年間のバイトで天狗になったサブカルシュール気取りの僕は、ここで見事に鼻をへし折られる。


1日中編集部にいるバイトならともかく、毎日外へ出て行って色々な人から情報を貰わないといけないイチ若手記者が、いつまでもダウンタウン病で心閉ざしてボソっと喋って笑いとってやるぜなんて、通用するわけない。


徹底的に明るく元気に挨拶して瑞々しく大切さを知った。


人との繋がりや心意気をより感じた。


ちょうど10年前か。


そこで好きな芸人さんや役者さんのインタビューなんぞ出来たりし始める。


そんなことをしていると元々ロングインタビュー雑誌好きだった僕は、ロングインタビューをしたくなる。


何かロングインタビューっていうと、特にミュージシャンみたいなイメージはあった僕は、とにかくロングインタビューミュージシャンデビューをしたくなる。


そんな事をボーっと考えながら、どないしたものかなんて…、元々バイトで入った情報誌の音楽ページは先輩方ライターたちがいて、どうにも簡単には動かない感じ。


まぁ、いつか動かしてやるけどさなんて思いつつ、もうちょい何かないかななんて。


そんな時、UAさんのユニットがクアトロでやるなんて話があり、UAさんクアトロで観ることなんてできないぜと思い、向かった。


オープニングアクトがあるわけで、誰やろなんて観てたら、そこに赤い服着た女の子ふたりが現れた。


ドラムとギターのふたり。


突然、「太陽手に 月は心の両手に」を歌いだし、「うちらもUA観たいねん!」なんて言ってスーパーボールを客席に投げつけていた。


一瞬で恋におちた僕は演奏が終わるやいなや物販ブースへ行き、スタッフの方に、自分はライターであり、取材をしたいと伝えた。


ちょっとして出てきた彼女たちは、「ウチらアフリカ行くから、早めに取材して!」と言って笑ってる。


その場でちょうど関係性が出来上がっていたクイックジャパンに僕は電話をかけて、その場で取材のOKを貰った。


突然、島田紳助さんのM1インタビューが載ったテレビ情報誌関西版を送りつけてきた関西の変なライターに一度笑い飯インタビューをふったら、百年来の付き合いのようにプレゼン電話してくるなんて、本当に迷惑だっただろう。


でも、この人たちを取材して伝えなきゃアカンって本能で思ったのだ。


それが7年前。


あふりらんぽとは今も長い付き合いだ。


そんな話を地元の小料理屋で同世代の演者に話をした。


「今と変わってないね!」


そういや、その同世代バンドも去年のこの時期、十三でライブを観て、痺れまくり、MCで話をしていた春のニューアルバムを早く聴かせてくれ、担当者は誰なんだ!と十三の寒い路地で詰め寄ったのだった。


10年以上のキャリアあるバンドで、僕もその頃から勿論知っていたが、タイミングが、その時にきたのだろう。


売込みしまくって、気が付いたら、そのアルバムについて4雑誌のインタビューをし、レビューも1雑誌に書いた。


正月のテレビ番組は、そのバンドについて陰気ながらも熱気溢らせながら推薦コメントをしていた。


去年2回もツアーも付いていったし、「あの頃ペニーレインと」みたいに。


それがキングブラザーズ


スクービードゥーもミドリも、別に音楽に限らずダイノジチョップリン笑い飯…、よくしてもらってる演者さんとは何か大体そういう押しかけ女房みたいな話ばかりだ。


学生時代憧れて聴いていた人たちなんかにも、必死で食いついて逢えたりとかしてね。


で、気が付いたら来月2日で僕は33歳なのだ。


みなさんのおかげです、本気で、そう思う。


11年前の今頃、大学卒業を目前に控え、就職も決まらず、漠然と構成作家になりたいと思っていたぼんやりな、どうしようもないモラトリアム気取りだった僕は、今こんな感じになっている。


やってる事も基本変わらない。


少しは社交的になったが基本は暑苦しい熱苦しい。


まぁ、こんな感じで今後もいくのでしょう、てか、いくしかないし。


うん、来月33歳なんだよ。


だから僕より若い人たちも、とにかくがむしゃらに何か貫いてたら何とかなるんだよって思うのです、偉そうですが。


33歳来月控えた僕も何とかなってるんだから。


久しぶりに真面目に書いたな。


さて小料理屋に日本酒でも呑みに行きますかなんつって、大人ぶってみる2011年冬…始まったばかり。