窮屈。
余談●言葉
「誤字 脱字 アツジ!」…なんていう一発ギャグを、先輩に考えて頂いた。
まぁ不名誉な一発ギャグである…それは置いといてと。
若手編集者からよく「”てにをは”が、たまに鈴木さんおかしいんですよ」と言われる。
前にもこの手の話は書いて、一部編集者からはブーイングを浴び、一部編集者からは「仕方ないですね…」と愛情を頂いた、僕の「”てにをは”は編集者が直してくれよ!」発言。
ちょいとエエように言うと魂込めて衝動熱情で一発書きした原稿の細かい微調整は編集者がやってくれたらエエじゃないか!という甘えた発想。
今も或る意味間違えると思いながら、或る意味間違えてないななんて思うんですが。
何なんだろう、勢いを大切にしたいというか。
昔よりは推敲をするようになったけど、それでも他の人よりは少ない方かなと。
オカン玲子に聞くと、小さな頃から下書きが大嫌いで、いきなり作文などを書き出す僕を、下書き命の精密慎重なオカンや祖母はビビッていたらしい。
だって下書きなんて面倒臭いやないかい!というシンプルな理由なんですがね。
そういや、小さな頃から作文は大好きだったんだが、今と変わらず〆きり(提出日)ギリギリまで一切書かない僕は、オカンにせっつかれてから書いていた。
今から思えば不思議な作業であった。
まず「そろそろ書きなさい! 何を書くの?!」から始まる。
僕は「遠足かな」なんて呑気に答える。
オカンが遠足について僕にあれやこれやと質問してくる、で、それにこりゃまた呑気に答える。
そこで大体の書きたい事のあらすじを作っていく。
出来上がったところで僕が下書きも何もなしで書いていく。
今から思えば編集者みたいな役割だったのか。
小学5年生から、その作業は自然になくなった。
で、そうなると膨らます作業がなくなったので、一気にボリュームは減ったが、濃いい部分だけが書かれたシンプルストレートコアなものになった。
自然に長文も書けるようになり、今に至ると。
多分、僕の”てにをは”を未だに一番しているのは、オカンではないかと思う。
余談●やかんの夢
KETTLESというバンドに出逢ったのは、去年。
とあるホームページの動画から。
東京のバンドで関西では、まだライブをやっていないバンド。
ギターボーカルの男子とドラムの女子、ホワイトストライプス的な編成なんだけど、何ていうのかな、何か変な感じがしたんだよな。
爽快感があるわけでもなくて、でも違和感はもちろんなくて、何か胸にこびりつく気になる音、気になる存在というか。
どことなく情けないけど一生懸命で、やっぱし気になる。
配信用アルバムをまとめた盤を入手し、年末には東京のとあるライブ会場でお逢いして一言喋ったけど、何かいい人たちなんだろうなって滲み出てる感じというか。
そんな配信限定1stアルバム「ビー・マイ・ケトル」がリニューアルしてついに6/15CD化になる。
サンプル頂き、やっぱいいなぁ〜と思いながら染みてたんけど、まだ何か上手く言葉にできなくて。
そんな先週のある夜、深夜3時半過ぎ、スペースシャワーTVにKETTLES「夢の中まで」と…。
POLYSICSのハヤシ君がプロデュースした、この歌は、どこかに籠もりながらもふわふわ浮遊して届いてきちゃったシンプルなロックンロールで、ふたりの声が交じり合う時がたまらなく気持ち良いのだが…、そのビデオがとんでもなかった。
何気ないふたりの演奏シーンかと思えば、突如45秒くらいからアパートの階段が映り、歌は鳴ったまま、ボーカル男子の家が映り、彼が喋っていくという生々しいドキュメンタリーになっていく。
安っぽい蛍光灯、ビールと煙草が散乱した机、垣間見られる機材、レコード屋袋、洗面台で髪を洗う、電気ストーブで髪を乾かす…汚い部屋、スーパーでカップ麺を買い物、地下鉄で移動、レコード屋でただレコードを掘る…、2人でのスタジオ、コインランドリーに寄る2人、何でもない生活の中でぽつりぽつりロックンロールやパンクや音楽を「宇宙の謎」なんて語る、真面目や適当について語る、語る語る語る何でもない生活の中で。
理想だった事や、そこへの焦りとか、そのまんまの男子の屈託ない葛藤が笑顔で語られる。
仕事で得られるリアルな給料を語り、ぼやく。
「レコードとかは…………買えないから…」
CD棚の前に座りながら寂しそうに、彼がそう呟いた時、ただ涙が出た。
非常におこがましいんだけど、何とかしたいって、そう思った。
演者さんの誰かを好きになる時は、いつもそうだ、僕が何とかしなきゃ、どうすんだよって、そう思わせてくれる人と必ず出逢って、必ず側にいようとする。
ラストシーンが好きだ、それは書かないでおこう、観てくださいよ。
たまらんちなんだよ。
ドキュメンタリーシーンが流れている時も、「夢の中まで」の音楽は一切途切れない。
5分半のプロモーションビデオ、5分半のパーソナルビデオ。
自分の生活のBGMが、自分の音楽だなんて、素敵だなって。
関西には7月に初めて来る、もちろん逢いに行きます。
彼らの音楽は報われるべきだよ、だって、こんなに誠実に生活をしているのだから。
そして、そんな生活から鳴る誠実な嘘のない音楽なんだから。
ちなみに映像ディレクターは木本健太さん。
お逢いした事ないけど、彼の映像は好きです。