7月の夜。

結局、6月、1回も書いてない。


文章で何とか飯を喰わせて貰ってる軟弱な僕は仕事で書く文章が精一杯で、中々余技のブログに手が付かないし、余技の文章は息抜きになるからスラスラ書けますよなんて素敵な器用な感じにならない。


6月9日、俗に言うロックの日に、僕は下北沢にいた。


33歳になっても下北沢にドキドキしちゃう。


明け方下北の路上で、このブログではお馴染み東京の偉い人(下北の妖精師匠)に、「ブログ更新してなさすぎ! ツィッター全盛だからこそ、きっちりした読み物を残さなきゃ!」と叱咤される…、叱咤されたなんて言いながら、その後1ヶ月も書いてないんだからエエ度胸だよね。


DECKRECのショボ兄(下北の妖精兄さん)にも、「見ても見ても更新されてないんだもん!」とついこないだ言われて、ようやく重い腰をおろしたというか。


でも、書きたい事は山ほどあって…何から書いてエエのかと思ってて。


とんでもなく今熱中夢中感動してる事とか、とんでもなく今悲しかったり悔しかったり怒ってたりする事とか、色々頭の中で文章を書いてはゴミ箱にポイっとする、ここ1ヶ月。


ふわっと日常で思った良い意味で何でもない事を書こう、でも意味のない事は書かないけどね、何か何でもなさ過ぎる明るく楽しい元気な事は僕が書く必要はないから。


くだを巻く暇があったら書きなさいってね。


えっとだ、心斎橋クラブクアトロが現在の場所という意味では、この秋で閉まる。


20周年の今年に閉まる。


僕だって、今はもちろんだけど、ホント学生時代お世話になったんだよ。


いわゆる外タレをたくさん観てきた場所だ。


で、何ていうのチョッとした老舗シャレオツ感があってさ、何か渋谷系みたいな。


クアトロって、何か大人の感じがしたんだよな。


そうそう、そこで、くるりを観たのだ、5人組になった。


くるりは岸田さんと佐藤さんは僕の1コ上で、本当思春期真っ盛り学生時代オンタイムで聴いていたバンドで、今も聴き続けていて、去年初めて取材で逢えたりしてさ。


やっぱ昔から知ってる人というのは、逢うと緊張するもんですよ。


全てのアルバムを持っていて、リアルタイムでインタビューも読んできてるし。


自分が好きな演者さんは全て一貫している、どこか天邪鬼で世間を斜めから見ていて、絶対、人と同じ事をしないヒネクレ者…、でも誠実で常に自問自答をしている。


1曲目「ブレーメン」から何かようわからんけど、涙出てきた。


音楽であろうとお笑いであろうと芝居であろうと、僕は生モノの始まりの瞬間のキラキラしたパワーに弱い。


キャリア約15年とかあるバンドが未だに進化をし続け、また新しい事に挑戦しようとしている、その姿、そして何か新人バンドみたいな瑞々しさがたまらなく良かった。


でも、やってる曲は昔から聴いていた曲だ。


この曲は、あのアルバムだ…、その頃はこんな事があったな、あの時の恋人や友達、で、その頃の出来事なんかを、まるで写真のアルバムを見ているかのように思い出す。


音楽って、そういう魔法があるから素敵。


学生時代に既にクアトロでライブをしていて、いかにそれがステータスだったか、でも、それをいかに普通に当たり前の感じで人に言っていたかなんていう、ふたりの若気の至りがMCで話されたりする、それは下北に対しても。


「下北って意外と普通の街やで」なんて済ました顔で言ってたなんて、わかるわかる思いながら笑う。


最後の曲は当時クアトロで「ピカピカの新曲です」と言って歌った覚えがあるという「東京」。



その頃、ちょうどくるりは京都から東京へ拠点を移す時だった。


当時のインタビューで強烈に覚えている事がある、岸田さんは上京と言わなかった事。


「上京やないよ、東下りやから」


当時20歳でビンビンにいきり立っていた僕は、その言葉でビンビンに興奮して、いかにも自分の言葉のように「東下り」なんて使っていたな。


その話を先日お話したら、爆笑された。


いやぁ、でも当時あの言葉は、とんでもなくかっこよかった。


そんな事を思い出しながら、「東京」を聴いていた。


98年に気持ちよくタイムスリップさせてくれる。


大人になったふたりが、でも昔の歌を歌っても、違和感なくて逆に説得力があって…。


終わってフロアでボーっとしてると、異性と一緒の僕より10個下くらいの顔見知り若手を見かけた。


その異性も多分、その子と同い年くらいなんだろう若々しく、また瑞々しい2人だ。


異性といるし、恥ずかしがりの僕は声をかけないでおこうとしていると、向こうからお声をかけて頂く。


明るい顔で明るい声で「元恋人なんです!」と屈託なく紹介される。


あぁ、いいなぁ〜って、33歳のおじさんはキュンキュンなってしまった。


その子たちは多分、今日のくるりライブを聴きながら、この曲は付き合ってた頃に2人で、よく聴いてたななんて思ったりしてたはずだ。


何かしらタイムスリップをしたはずだ。


「今は仲の良い友達なんです!」と又屈託なく話してくれる。


見事にくるりの魔法にかかった僕は、「素敵じゃないか!」なんて又もやキュンキュンしてしまった。


普段なら人の色恋沙汰なんて全く興味ないんだけどね。


2人は、何事もなかったかのように普通に仲良く帰っていった。


電車の中で、今日何が良かったかなんて話しているんだろうな。


音楽には魔法がある、嫌な思い出も、一瞬、良い思い出に彩ってくれる魔法がある。


だから、くるりって好きなんだよ、センチメンタル好きの僕は、いかにもくるりらしい出来事だなとひとり満足しながら大量の原稿が待つ作業場へと帰っていった。


この感じわかるかな、わかんねーだろなー。


今年の夏は暑くなさそう…、久しぶりに、そんな事を言いたいものだ。


僕は大人になっているんでしょうか?、知らねーよバーカ!…なんつうて。


お後がよろしいようで。

BGM=くるり「青写真」